コラム
同時にやるシクミづくりとヒトづくり。
やっと気づいた改革の本質
【第38回】やる気の見える化(1)
株式会社RDPi 代表取締役 石橋 良造
2014.07.24
エンゲージメント改善のカギ
次に、エンゲージメントの数値化の事例を紹介したいと思います。図は、取り組み当初のある月における個人ごとのエンゲージメントを数値化したものです。最高は 54 点、最低は 0 点です。グラフを見ると、最高は 48 点であること、最低点0点の人がいること、そして、全体は広く分散してばらついた点数分布となっていることがわかります。このグラフからは、人によってエンゲージメント、つまり、仕事に対するやる気や意欲は大きく違うことがわかります。組織全体の単一の取り組みでは一人ひとりには届かないということです。
次に、部署を任されているマネジャーに大きな刺激となったグラフを紹介しましょう。このメーカーは、電気や機構といった技術軸ごとに部署が分かれているのですが、次に示す図はその部署ごとのエンゲージメントの平均値を示したグラフです。部署によって大きな違いがあることがわかります。部署によって取り組み方を考える必要があることが明らかになり、良くも悪くも比較されることによって、低い部署のマネジャーは本気度が上がりました。いわれたことだけをやるのではなく、自分で考えるようになり、メンバーと1週間に1回は「15分面談」を持つなどの取り組みをはじめたのです。
モチベーション向上というと、座談会やビジョンの勉強会を開いたり、個人の育成プランを作ったりすることが多いと思いますが、この事例からは、一人ひとりのことを把握して、一人ひとりに合った対応が必要だということがわかります。まず最初にやるべきことは、マネジャーが自分の部下のことを把握することであり、エンゲージメントの見える化はそのための効果的なツールです。
さて、エンゲージメントの事例はいかがだったでしょうか?
多くの会社で様々な改善の取り組みを行っていると思いますが、そのときに組織としての状況把握だけでなく、個人の状況把握をすることが大切なことをわかっていただけたのではないでしょうか。今回紹介したエンゲージメントの見える化は、個人の状況を定量化し把握するための効果的な仕組みです。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
●執筆者プロフィール 石橋 良造
日本ヒューレット・パッカード (HP) に入社し、R&D 部門で半導体計測システムの開発に従事した後、開発プロセス改革プロジェクトに参加。ここで、HP 全社を巻き込んだ PLM システムの開発や、石川賞を受賞した製品開発の仕組み作りを行い、その経験をもとに 80 社以上に対して開発プロセス革新やプロジェクト管理のコンサルティングを実施。独立して株式会社 RDPi を設立した後は、より良い改革のためには個人の意識改革も必要、と、北京オリンピックで石井慧を金メダルに導いたピークパフォーマンスのコーチ養成コースを修了し、個人のやる気やモチベーションを引き出す技術の開発と、開発プロセスやプロジェクト管理の仕組み改革との融合を続けています。
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仕組みと意識を変える RDPi