Club-Zコラム第37回

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

コラム


同時にやるシクミづくりとヒトづくり。
やっと気づいた改革の本質

【第37回】必要最小限の手間で効率的な実践的進捗管理(2)

株式会社RDPi  代表取締役 石橋 良造

2014.06.19


基準メトリクス

収集が難しい工数も含めて、2軸管理と基本メトリクスセットの考え方にもとづいてデータ収集できるようになれば、プロジェクトをバランスよく可視化することができ、さらに、成功したプロジェクトと失敗したプロジェクトの違いが目に見えてわかるようになります。これが基準メトリクスの考え方です。

基準メトリクスとは、成功したプロジェクトと失敗したプロジェクトを層別し、成功したプロジェクトの可視化したデータから抽出した共通パターンのことです。数値モデル化したベストプラクティスといってもいいでしょう。

したがって、基準メトリクスはプロジェクトが目指すべきゴールとして利用するもので、すべてのプロジェクトが基準メトリクスと同じパターンになるようにマネジメントするのがねらいです。

基準メトリクスの考え方で重要なのは、目指すべきゴールを自分たちの実績から決めるということです。どこかの教科書に書いていることや他社の実績を持ってきてゴールにしたり、技術者のスキルやプロジェクトの難易度などの多くの属性を数値化して分析的にゴールを決めることではなく、自分たちの実績のある成功パターンをゴールにして、すべてのプロジェクトでそれを目指すことが大切なのです。自分たちの実績なのですから、目指すべきゴールとしての納得感は高く、効果的なゴール設定が可能になります。

これまでの経験から、同じようなメンバーで同じような製品やサービスを開発している限り、組織の実力はマクロ的、帰納的に決まるものであり、そうやって作ったものが基準メトリクスなのです。


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基準モデルの事例

それでは、基準モデルの事例を紹介しましょう。

図100 は開発プロジェクトにかかった工数とリリースするまでに検出した不具合件数の相関を示したグラフで、様々なメーカーの 78 プロジェクトの実績です。グラフから、全体として工数と不具合件数は相関があることがわかります。図で囲んだ部分はある車載機器メーカーのデータなのですが、このようにある組織をとってみるとより高い相関があることがわかっています。このことから、組織ごとに開発工数と不具合件数の関係は基準モデルとしてパターン化することができます。

この基準モデルは、プロジェクトの工数見積りから評価・テストで何件不具合を検出すればよいのかという、工数見積りが困難な評価・テスト工程を見積り可能なものにします。どこまで評価やテストしてリリースすればいいのかをそのときどきの属人的な判断に任せているような場合は、今すぐにこの基準モデルを作るとよいはずです。


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