Club-Zコラム第34回

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

コラム


同時にやるシクミづくりとヒトづくり。
やっと気づいた改革の本質

【第34回】縦の関係、横の関係

株式会社RDPi  代表取締役 石橋 良造

2014.03.25

早いもので今年も 1/4 が終わろうとしています。まさに、1月行く、2月逃げる、3月去るという感じです。

さて今回は、連続的な成長ではなく、非連続な大きな成長のために「チーム」体制を定着させようとしている、あるメーカーでの取り組みを紹介したいと思います。取り組みをはじめる前は、役員が「現場の技術者はみんな上司からの指示を口を開けて待っているだけ」と嘆いていたのですが、今は、「若手がイキイキしてきた」「自律心が芽生えてきた」と言っています。製品も新技術を使ったラインナップが加わりました。個人が成長し、組織が成長した結果だと考えています。


「チーム」と「グループ」

プロジェクト・チーム、チームメンバー、チームリーダー、ワーキング・チームなど、職場では普通にチームという言葉を使います。

では、どんな特徴を持つ集団を「チーム」とよぶのでしょうか?

これまで、製品やサービスの開発・保守を行う会社をいくつも見てきましたが、「チーム」になっている組織、「チーム」が機能している組織は非常に少ない。ほとんどの組織が「チーム」ではなく「グループ」なのです。

『第26回 イノベーションのための「チーム体制」』では、チームとグループの違いを次のように書きました。

グループ

  • 共通の性質で集められた集団
  • 指示されたゴールを達成するために行動する
  • 決められた作業を規則正しく実行する

チーム

  • ある目標を情熱を持って達成するための集団
  • 目的や目標を共有している多種多様な人材からなる
  • メンバーが互いに助け合い、補うことで目標を達成する

グループは「縦の関係」、チームは「横の関係」というとわかりやすいかもしれません。

指示と報告が重要で、決められたことを着実に実行する、そのために上下関係と業務を明確に定義する「縦の関係」が中心となっているのがグループです。一方、協調と補完が重要で、失敗を許容しながら前進する、そのために目標を共有し衝突しながらも助けあうという「横の関係」が中心となっているのがチームです。

チームの特徴をさらにあげておきましょう。

  • 自分の弱みを見せていることで信頼関係ができている
  • 多様な個性や特性を持つメンバーからなる
  • 失敗を許容する、リスクをとる
  • メンバーはコンフリクトを恐れず自由に意見を言い合う
  • リーダーはいるがメンバーに階層的な上下関係はない
  • メンバーは誰もが主体的に行動しようというオーナーシップを持つ

上からの指示や決められた役割にこだわることなく、メンバー相互の連携や協力、信頼で動くのがチームです。上下関係ではない横の関係で成り立っているということができます。

あなたがメンバーとなっている集団、組織は「チーム」でしょうか、それとも「グループ」でしょうか? チームとグループの違いをまとめてみました(図83)。


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「役」を演じる

今回紹介するのは ISO や CMMI などの業務や開発プロセスの仕組み構築はもちろん、職務定義や人材育成などの仕組みにも力を入れているメーカーです。その影響もあるのか、マネジャーも技術者も上からの指示にまじめに従う傾向が強く、図83 でいえば、よく機能しているグループといえます。

反面、指示を出す立場であるマネジャーやリーダーは帰宅がいつも深夜になり、顧客からの指摘や改善活動で管理業務は増える一方なため、技術者たちも残業が慢性化していました。また、若手は上司や品質管理部門から指摘されないようにすることが最優先になっているきらいがありました。

トップマネジメントは、顧客からの要求にまじめに応えることで次第に疲弊していく開発現場に危機感を持ち、提案型の開発、自律した組織文化に変えようと言い続けていたのですが、状況が改善することはありませんでした。

この状況を打開するために取り組んだのが「チーム」づくりで、最初に導入したのが「役のアサイン」です。この「役」とは、メンバーの専門や技能をもとにアサインされる役割とは別に、プロジェクトを通じて自分が責任をもって果たす役目のことです。たとえば、あるエレキ技術者は当然、電気/電子回路設計を担当するわけですが、それとは別に、製造との交渉役を受け持つというような具合です。通常は、製造とのやりとりの責任者はプロジェクトリーダー(PL)の仕事の一つになることが多いと思います。図84 にプロジェクトでの「役」のアサイン例を示します。



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プロジェクト運営に必要な仕事を分類していくつかの「役」を定義しますが、「役」とはプロジェクト期間を通じて必要となる仕事をこなす係と考えることもできます。ただし、ある「役」をアサインされた人は、専門や所属に関係なく、その役に関してはその人がリーダーとなり責任を果たすというのがポイントです。リーダーですから、何もかもを自分でやるのではなく、他のメンバーと協力することも考えなければなりません。

このメーカーでは、まずは3つのプロジェクトで図85 を使って役アサインの考え方を伝え、実施しました。役の定義とアサインだけでなく、その役を演じるときの行動指針、行動目標も考えてもらいました。その役を演じるときの行動を具体的にイメージしてもらうためです。


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良くも悪くも言われたとおりにやるという組織文化だったので、図85 の内容そのままでメンバーをアサインするだけかと予想していたのですが、予想はうれしい方向に外れ、それぞれのプロジェクトがユニークな定義をしてくれました。そのひとつを図86 に紹介します。