Club-Zコラム第31回

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

コラム


同時にやるシクミづくりとヒトづくり。
やっと気づいた改革の本質

【第31回】製品バリエーションを最適化する

株式会社RDPi  代表取締役 石橋 良造

2013.11.28


お久しぶりです。連載を少しお休みしていた間に冬になってしまいました。

このところ B to B の請負型の製品開発の改善に取り組んでいたのですが。そこでは、改めて開発上流での取り組みや、全体最適となる取り組みが大切なことを実感しました。今回は、前回からの流れとは違いますが、この取り組みについて紹介したいと思います。


開発の特徴と課題

B to B の請負型といっても様々な製品開発があるので、まずは今回の話がどのような形態をイメージしているのかをお伝えしましょう。

  • 基本製品はあるが、顧客要求に応えるために少しずつ変更が加えられた製品をリリースしている
  • 約3年ごとに要素技術が大きく進化する
  • 製品は電気や機構などのハードと組み込みソフトからなるが、ユニットごとの技術専門性が高い

主力製品の派生モデルを数多く開発することにより、多様な顧客要求に応えることをビジネス方針としているのですが、次のような課題を抱えていました。

  • 派生開発にもかかわらず開発工数の削減や開発期間の短縮ができない
  • 派生開発に設計者をとられてしまい要素技術開発に影響が出ている
  • 製品の種類が増えて管理や保守のオーバーヘッドが大きくなる一方
  • 流用性を高めることに注力しているがなかなか成果が出ない



対策の考え方

顧客との関係を考えると、基本製品のバリエーションが増えるのを避けることは基本的に難しいため、派生開発を効率化することと、採算性を確保することをねらって対策を検討しました。

派生開発の効率化のためには、主力製品と派生製品に共通する部分を増やして、派生開発する個別部分を減らす必要があります。また、採算性確保のためには、場当たり的に顧客要求に応えている状況を、適切な製品(モデル)バリエーションに展開することが大切です。

実施した対策は、基本製品とそれをもとにした派生製品をひとつの製品群(ラインナップ)としてとらえ、製品群に共通する「技術コア」の開発を仕組み化するというものです。

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開発プロセスの全体

まず、開発プロセス全体を紹介したいと思います。ポイントは、主力製品および派生製品に共通する技術コアの開発プロセスと、個別の製品(モデル)開発プロセスとの2つの並行するプロセスとなっているということです。

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コア技術開発プロセスは、開発する製品(モデル)を製品群としてひとくくりにした開発計画と、すべてのモデルに共通に使える技術要素(技術コア)を作るためのものです。

できたものから使えるところを探して使う「流用」とは違い、開発するすべてのモデルを見渡して、事前に「再利用」するものとして開発するものが技術コアだということに注意してください。また、コア技術開発プロセスですべてのモデルの基本開発計画(全体計画)を作成することにも注意してください。個別のモデル開発は、全体計画にもとづいて行われます。

コア技術開発プロセスは大きく3つのサブプロセスからなります。中期的な開発計画である「テクノロジー・ロードマップ作成」サブプロセス、ユーザーに対してどのような利用環境を提供するのかを具体化する「ユースケース分析」サブプロセス、そして、それらを満足する製品内部の基本構造を設計する「システム設計」サブプロセスです。

個別モデル開発プロセスも大きく3つのサブプロセスからなります。現実的な QCD でコア技術の製品化可能かどうかを検証する「先行開発」サブプロセス、モデルを構成するユニットを個別に開発する「ユニット開発」サブプロセス、そして、開発したユニットを統合して製品にする「製品統合」サブプロセスです。


コア技術開発プロセスの効果

今回、取り組んだ改善では、まだ目に見える効果は出ていませんが、他社での取り組みでは、個々のモデル開発にかかる期間と工数を大幅に削減することや、製品ラインナップ全体の大幅な開発効率アップを実現することができました。

たとえば、ある複合機メーカーではコア技術開発プロセスを確立することによって、平均 100 人月かかっていた製品開発を平均 48 人月にすることができました。また、3つの主要顧客向けにそれぞれ約 100 人(合計 300 人)の技術者で年間3機種の開発を行っていたあるマルチメディア端末メーカーでは、開発機種数を減らすことなく全体の技術者を約 200 人にすることができました。

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