Club-Zコラム第29回

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

コラム


同時にやるシクミづくりとヒトづくり。
やっと気づいた改革の本質

【第29回】採用試験を見直した Google

株式会社RDPi  代表取締役 石橋 良造

2013.07.25


先月は Google の事例を紹介しました。どんなに優秀な技術者が集まっていたとしても、成果を出すことができるかどうかは、チーム・マネジメントがカギだということでした。引き続き、今月も Google の事例を紹介したいと思います。


Google の採用試験

いきなりですが、次の問題、いくつ回答できますか?

スクールバスの中にゴルフボールは何個入りますか?

マンハッタンにガソリンスタンドは何軒ありますか?

尋ねたり手伝ったりしてくれたりする司書もいなく、その分類方式もわからない初めて行く大きな図書館で特定の本がどこにあるか、どのようにして探しますか?

あなたは5セントコインほどのサイズに縮んでしまいました。質量は今現在の密度を維持しています。そのあなたはガラスのミキサーに投げ込まれ、ミキサーの刃が 60 秒後に動き出します。さぁ、あなたはどうしますか?

正20面体を三色で塗り分けしていった場合、何通りのパターンになりますか?


これらは Google の入社試験で出された問題です。難しいクイズ番組で出てくるような難問、奇問ばかりですね。Google は優秀な人材を選抜するために、採用試験でこのような問題を出して、論理性や柔軟性、発想力などを見ているということで一時期、話題になりました。

しかし、今ではもうこのような採用試験はやっていません。その理由を人事担当副社長がニューヨーク・タイムズに語っています。

In Head-Hunting, Big Data May Not Be Such a Big Deal

先月の事例もそうですが、Google がすばらしいのは、様々な試みをすると同時に、その有効性を詳細にデータ収集して分析するところです。この記事によれば、採用試験についても採用後数年に渡ってデータ収集を行い、仕事で成果を出す人材の採用のためには何が有効なのかを調査、分析したということです。簡単に内容を紹介したいと思います。



採用試験の有効性

1.難問・奇問は効果なし
論理性や分析力などを見極めるために、前述のような難問・奇問を出題しても、その回答能力は、入社後の仕事のパフォーマンスにまったく関係がないことがわかりました。難問・奇問は、優秀な候補者を判断することには何も寄与せず、採用する側の自己満足でしかなかったと厳しく評価しています。

2.優秀な採用者はいない
優秀な人を採用できる人とはどんな特性や属性を持つのかについても分析しています。結果は、優秀な人材を採用できる特別な人はいないということでした。優秀な人材を採用時に判断できる特性や属性はないのだから、今では、採用する側に裁量を与えることはやめて、共通の項目にもとづいて候補者を評価することにしているということです。

3.リーダーにもっとも重要なのは一貫性
採用がもっとも難しいのがリーダーであり、それは、リーダーの資質が曖昧で明確に定義できなかったためでした。しかし、調査・分析によれば、一貫性がもっとも重要であることがわかったということです。

これは、先月紹介した事例の Project Oxygen も関係しているでしょう。リーダーやマネジャーの重要性について、インタビューの中で次のように強調しています。

  • 一貫性のあるリーダーのもとでは、チームメンバーは与えられた条件や前提が明確なので大きな自由度を持つことができ、やりたいことができる。そうでないリーダーのもとでは、どんなときにもリーダーの目が光っている大きな制限や拘束のもとにあるため、やりたいことができない。



4.従業員がマネジャーを評価する
採用試験とは関係ありませんが、インタビューの中ではマネジャーの重要性についてさらに言及しています。メンバーの評価こそがマネジャーの評価なのだと言っています。

  • Google では年2回、従業員がマネジャーを評価する「Upward Feedback Survey(上司へのフィードバック調査)」がある。この調査では、マネジャーがチームに対して敬意を持って接しているか、そして、明確にゴールの要点を示しているかを評価する。評価はマネジャーごとに集計し、直接伝える。たとえば、下から8%以内だと結果を伝えても、本人が自分はそんなには悪くないと考えがちだが、それが事実だと強く伝える。



5.学校の成績は重要ではない
Google でも以前は、入社試験時には学校の成績を提出してもらっていたそうですが、これも調査・分析の結果、Google に入って2~3年後のパフォーマンスは、学校での成績とまったく無関係だということがわかったということです。学校で要求されるスキルは、Google で要求されるものとは大きく違うからだと結論づけています。さらに、次のようなとても印象的なことを言っています。

  • 人は、学び、成長することで別の考え方ができる、まったくの別人になる。