コラム
同時にやるシクミづくりとヒトづくり。
やっと気づいた改革の本質
【第22回】ネガティビティを減らす分析とシミュレーション
株式会社RDPi 代表取締役 石橋 良造
2012.12.20
前回の「3:1の法則」は覚えていますか? 仕事にしろ、生活にしろ、ポジティブ感情をネガティブ感情の3倍にすることが大切でしたね。実践しなければ何も変わりません。実践していますか?
さて、この3:1というポジティビティ比率ですが、夫婦関係などの親密な人間関係においては「5:1」という研究結果があります。
夫婦の行動分析から求められた値で、3:1より大きな値となっているのは、親密な人間関係の場合はよりネガティビティ・バイアスがかかりやすいからだということです。私も相手が身近な存在ほど期待値が高くなるし、わがままになりがちです。5:1というハードルは高いですが、パートナーとはポジティブ感情が5倍になるようにしたいものですね。
今回はポジティビティについての実践方法と、感情についての理論をもう少し紹介したいと思います。
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前回の「3:1の法則」ですが、数値にこだわるのではなく、日常的な心がけとしてポジティブ感情を増やすことを意識することが大切です。ただ、そもそもポジティブとネガティブの感情をどうやってカウントすればいいのかと疑問に思ったかもしれません。実は、感情をポジティブとネガティブに分類することは可能でも、定量化するのは困難です。時間を計測するという考え方もありますが、少々単純化しすぎている感じがします。
参考のため、前回紹介したフレドリクソンの著書「POSITIVITY」のホームページにある、ポジティビティ比率を自分で確認できるツールを紹介しておきましょう。ちなみに、「POSITIVITY」の翻訳が前回紹介した「ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則」です。
Positivity Self Test
http://www.positivityratio.com/single.php
簡単な質問なのですが、英語がやっかいかもしれませんので、意訳してみました。正確ではないかもしれませんが、参考にしていただけると幸いです。
採点方法は次の通りです。
次の質問番号のうち点数が「2」以上のものを数えます(P個)。
1, 4, 8, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 19
また、次の質問番号のうち点数が「1」以上のものを数えます(N個)。
2, 3, 5, 6, 7, 9, 10, 17, 18, 20
ポジティビティ比率は P を N で割った値です。
ポジティビティ比率 = P / N
いかがでしたか? 想像しているよりも点数が低かったとしても、まずは、折に触れ自分の感情に意識を向けることからはじめましょう。この自己診断テストをすることは、自分の感情を振り返る良い機会にもなっています。継続してやってみるのが効果的です。
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ポジティビティを増やすには、まずは自分の感情を意識することが大切だと言いましたが、具体的にどうやったらポジティビティを増やすことができるのかと疑問を持った方もいるかもしれません。そこで、ここではポジティビティを増やす技術について解説したいと思います。フレドリクソンの著書「ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則」にも解説があるので、読んでみると参考になると思います。
私は、ポジティビティを増やすことを、機嫌の良い状態を作り自律性を高める技術としてとらえていて、次の3つに分けて考えています。
- 1. 瞬間的・短期的にネガティビティを断ち切る技術
- 2. 日常的・中期的にポジティビティを機能させる技術
- 3. 持続的・長期的にポジティビティを維持する技術
「瞬間的・短期的にネガティビティを断ち切る技術」には、第20回で紹介した「90 秒ルール」や、第4回「ココロの状態は自分で決めることができる」など、これまでに「自律性」というキーワードで紹介した「意味づけしていることを知る」というような技術があります。
「日常的・中期的にポジティビティを機能させる技術」には、第13回「熟達を容易にする心の状態『フロー』」で紹介した拡張的知能観を身につけることなどがあります。
「持続的・長期的にポジティビティを維持する技術」には、第14回「本源的な質問に答えてわかる『目的』」で紹介した「自分軸を知る」などがあります。
この3つに分類される技術については、この連載の中で今後も紹介する予定ですが、今回は、日常的・中期的にポジティビティを機能させる技術のひとつである「感情に素直に向き合う」ことを紹介したいと思います。
出来事には本来意味はないのに、ネガティブな意味づけをしてしまい、その意味づけによって落ち込んだ気持ちになるのが、ネガティブ感情を生むことになるわけですが、この時にしばしば陥る思考に、
「こんなこと考えても仕方ない」
「これからはもっと良いことがあるはず」
「こんな嫌なことは早く忘れよう」
というようなものがあります。一見、ポジティビティにつながる行動のようにもとれますが、これは、無理やりネガティブ感情から逃げたり、忘れたり、避けたりしているだけの「偽(にせ)ポジティビティ」です。逃げる、忘れる、避ける、あきらめる、耐える、という行動ではポジティビティにはなりません。同じようなことが起きたときにはまた、同じようにネガティブ感情になる、その繰り返しです。
大切なのは、ネガティブ感情が起きたらしっかりと向き合うことです。つまり、自分の判断(意味づけ)を加えずに、自分の感情や思考を確認するということです。分析するといった方が近いかもしれません。そして、分析した一つひとつについて、どうしていたら自分は機嫌良くできたのか、満足できたのか、そして、自分らしいと思えるのかを考えます。ネガティブ感情を生んだ出来事をもとに、さらなるシミュレーションをするといってもいいでしょう。技術にかかわってきた人には難しいことではないはずです。
ネガティブ感情に、分析とシミュレーションを通して十分に向き合うことで、感情を冷静に処理することができ、次に同じようなことがあったときのネガティビティを減らすことにつながります。
今回はこれで終わりです。
今回も最後までおつき合いいただきありがとうございました。
●執筆者プロフィール 石橋 良造
日本ヒューレット・パッカード (HP) に入社し、R&D 部門で半導体計測システムの開発に従事した後、開発プロセス改革プロジェクトに参加。ここで、HP 全社を巻き込んだ PLM システムの開発や、石川賞を受賞した製品開発の仕組み作りを行い、その経験をもとに 80 社以上に対して開発プロセス革新やプロジェクト管理のコンサルティングを実施。独立して株式会社 RDPi を設立した後は、より良い改革のためには個人の意識改革も必要、と、北京オリンピックで石井慧を金メダルに導いたピークパフォーマンスのコーチ養成コースを修了し、個人のやる気やモチベーションを引き出す技術の開発と、開発プロセスやプロジェクト管理の仕組み改革との融合を続けています。
●株式会社 RDPi :http://www.rdpi.jp/
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仕組みと意識を変える RDPi