コラム
同時にやるシクミづくりとヒトづくり。
やっと気づいた改革の本質
【第16回】コンフォートゾーンに注意!
株式会社RDPi 代表取締役 石橋 良造
2011.12.22
コンフォートゾーンを出る
実は、モチベーション・コーチングを通じて気になるタイプの人たちがいます。彼らはありたい姿が明確で、自分らしさについても明確です。彼らは前述の未来志向でも、過去指向でもなく、今の自分を大切にしている現実志向といってもいいかもしれません。
置かれている環境下で自分の実力を出すことができているので、仕事に対する満足度も高いことが多いようです。自分の居心地がよい環境のことを「コンフォートゾーン」といいます。このタイプの人たちは自分のコンフォートゾーンを知っており、そこにいることでやる気も実力も出しているのです。
ただ、モチベーション・コーチングでは、このタイプの人たちのことが気になってしまいます。今の自分、今の環境を大切にしすぎていると感じるのです。今の仕事、今の環境に対する満足度は高いものの、このタイプの人にも不満なことはあります。そのときの反応は次のようなものです。
「計画的に仕事するようにいわれるのだけれど、締め切りに近づかないと本気が出ない性格だから難しい。ちゃんと結果は出しているのだから計画的になれればいいけど、今のままでも大丈夫」
「仕事をバリバリやりたいのに、残業規制があって思う存分仕事ができない。やる気を削がれる原因を作っていることを会社はわかっているんだろうか。ムダな時間の使い方をしている人だけ残業禁止にすればいいはず」
共通するのが、自分は仕事をちゃんとやっているし実力もある。自分に問題はないから周りが何とかすればいいというように思っていることがうかがえるという点です。さらに高いレベルを目指すのではなく、コンフォートゾーンにとどまることを選ぶのです。もっというと、今の自分で満足してしまい、成長の機会を逃していると思えるのです。
実際、締め切り間際で本気を出すスタイルでは、今はまだ良くても、より多くのメンバーを指導する立場になるなど将来のことを考えたら早晩困ることになるはずです。少なくとも、計画的に仕事を進めるために何が障害となっているのかを考えることは、自分の成長のための気づきを得ることになるでしょう。
同じように、会社が残業を禁止したから仕事はしないというのは自主性に欠ける考え方であり、どう過ごすのが良いのかを考えて実行する姿勢が大切なはずです。残業できなくても、独自に仕事を続ける工夫をするとか、良い機会だから手をつけることができなかったことをはじめてみるとか、自分の判断でできることがいろいろあることを忘れてはいけません。
コンフォートゾーンにとどまることは成長の機会を失うことなのです。このタイプの人はもちろんですが、誰もが、コンフォートゾーンにとどまることがないように気をつけなくてはいけません。自分のコンフォートゾーンを出ることを常に意識すること、忘れないでください。
さて、今回はここまでにしたいと思います。もうすぐ、年末年始のお休みですね。モチベーションについて自分はどのタイプなのか、自分はコンフォートゾーンにとどまっていないか、そんなことを考えてみる良い機会かもしれませんよ。
では、来年も引き続きおつきあいください。
●執筆者プロフィール 石橋 良造
日本ヒューレット・パッカード (HP) に入社し、R&D 部門で半導体計測システムの開発に従事した後、開発プロセス改革プロジェクトに参加。ここで、HP 全社を巻き込んだ PLM システムの開発や、石川賞を受賞した製品開発の仕組み作りを行い、その経験をもとに 80 社以上に対して開発プロセス革新やプロジェクト管理のコンサルティングを実施。独立して株式会社 RDPi を設立した後は、より良い改革のためには個人の意識改革も必要、と、北京オリンピックで石井慧を金メダルに導いたピークパフォーマンスのコーチ養成コースを修了し、個人のやる気やモチベーションを引き出す技術の開発と、開発プロセスやプロジェクト管理の仕組み改革との融合を続けています。
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