コラム
同時にやるシクミづくりとヒトづくり。
やっと気づいた改革の本質
【第8回】やりたい気持ちを膨らませ、完璧主義とはお別れしましょう
株式会社RDPi 代表取締役 石橋 良造
2011.03.24
やった後は習慣化
どうですか? 何だか取りかかれそうな気がしてきませんか?
明日からやろうではダメですよ。今からはじめましょうね。
さて、とにかくとりかかることができれば、次にやることは習慣化することです。1回やっただけで終わりにしないための工夫をするのが大切です。では、その方法を紹介します。
いい気分のための環境作り
まず考えることは、自分が楽しく、いい気分でやれるような心の状態と環境を作ることです。やる時間を楽しい時間にすることができれば、継続するのがずいぶんと楽になります。
やると決めたことをやるときには、好きな音楽をかけたり、見えるところに好きな絵や写真を置いたり、お気に入りの場所を作ってそこでやることにしたり、自分が気分が良くなることであれば何でもいいのです。
ここで大切なのは、「自分が」気持ちよくできる方法は何かです。常識や他人の声は参考になりません。たとえば、何かの勉強をするときでも、静かな落ち着いた自分の部屋がいい人もいれば、人がいて話し声が聞こえるスタバがいい人もいれば、いつでも本が読める図書館がいい人もいます。人それぞれなので、自分が気持ちよくできる状態を見つけてください。
例として出した「ホームページの作り直し」は、やってみると自宅のリビングでやるのが気分がいいことがわかりました。落ち着けるし、好きなときに横になったり、お菓子を食べたりできる(笑)のがいいようです。それに、身近に資料などがないので他の仕事はできないというのも良いようです。
ちなみに、提案書を作るのは事務所の方が気分がいいですね。資料がそろっていて広い机があり、好きな文房具がそろっているのがいいみたいです。こんな風に、やることによっても気分がいい条件や環境が違います。やろうと思えばどんな環境でもやれるという人もいますが(とくに男性に多い気がしますが)、そんなに単純な話じゃないのです。気分(気持ち)は大切にしなくてはいけません。
行動しないことと「苦」の関連づけ
次に考えることは、行動しないことと「苦」を関係づけることです。行動しないことが苦痛だと思えるようにするということですね。習慣化しようと考えている行動について、次のような手順でその関係づけを行います。
1.過去の苦痛を関係づける
- 過去にその行動をしなかったことで大失敗したことや、とんでもなく困ったことを思い出します。やらなかったことで、気分的につらく苦しかったことをありありと思い出します。これで、嫌な気分は高まるはずです。しっかりと自分の嫌な経験を振り返ります。
2.近い未来の苦痛を関係づける
- そして、その行動をしないままだったら、将来どんな大変なことになるのかを想像します。想像を膨らませて、具体的にどんなことになっているのかを、まるで今起きているかのようにイメージします。
- 聞いた話ですが、長年禁煙できない人がいたのですが、孫の結婚式に出るのを楽しみにしているというのがわかり、このままタバコを吸い続けると肺ガンになって結婚式に出ることができないという未来と関連づけたのです。そうすると、タバコを吸うたびに孫の顔が思い浮かんできて、とてもタバコを吸う気にならなくなったということです。イメージの力は侮れません。
同じように、行動することと「快」を関係づけることも可能です。手順としては先ほどの「苦」の場合と同じで次のようになります。
1.過去の快を関係づける
2.近い未来の快を関係づける
やらないことによる「苦」にしろ、やったことによる「快」にしろ、この段階でかなりの習慣化のためのイメージ作りができていると思います。さらに可能ならば、行動そのものに「苦」や「快」を結びつけるのが効果的です。
3.行動そのものに「快」あるいは「苦」を関係づける
たとえば、やりたい行動が筋トレすることで、この人がすごいチョコレート好きだとします。筋トレという行動そのものを快に関連づけるには、筋トレをスタートするときにチョコを1個食べ、腹筋が終わったところで1個、背筋が終わったところでまた1個、腕立てが終わったところでさらに1個、というように筋トレをやっている最中にちょっとずつチョコを食べるようにします。
これで、筋トレそのものがチョコレートのように好きなものになります。繰り返してやっているうちに、チョコレートがなくても筋トレ自体が好きになっていることがわかるでしょう。そうすれば筋トレは習慣になるはずです。
この3番目の方法は、心理学では古典的条件づけ(レスポンデント条件づけ)とよばれているもので、行動そのものが「快」となるような動機づけです。筋トレをきちんとやったからチョコレートを食べてもいいという結果に対する動機づけも可能ですが(これをオペラント条件づけといいます)、この方法では結果を求めるためにズルをしてしまう可能性が高くなり効果的ではありません。結果ではなく行動そのものが「快」になることが大切なのです。
行動するために(まとめ)
以上、習慣化の方法についてですが、個人的には、3番目の方法までやらなくても習慣化できるようにしたいですね。
苦痛を伴っていてなかなか手をつけることができないことがあるときの対処方法を長々と書きましたが、簡単にまとめておきましょう。次の3つのステップです。
ステップ1:「苦痛」をやわらげる
最初は、苦痛だと感じている気持ちを軽減させることを心がけます。そのための方法として以下のことを紹介しました。最初から結果や効果を出そうとしないことが大切です。
- やることを具体的にする
- やることをスケジュールに入れる
- やる時間を決める
- その場でリスケジュールする
- やる時間を短く設定する
- ちゃんとやろうとしない
- 最後までやろうとしない
- 効果が出るまでやろうとしない
ステップ2:「日常」にする
次は、特別のことではなくて日常の一部のことにします。別にたいしたことじゃない状態にするということです。次のようにできるだけ軽く考え、でも、何かしら触れる機会を増やすことが大切です。
- 「ながら」で良しとする
- なるべくいい加減にたくさんやる
この時点でも、結果や効果のことは気にしません。ながらでもいいし、いい加減でもいいのでやることが普通という状態にするのです。面倒だったり、億劫だったりする感情をなくすことがポイントです。
ステップ3:「快」と関連づける
最後は、行動そのものを「快」と関連づけます。これにより、気分がいいからやめられないという状態にします。次のようなことを紹介しました。
- 気分の良い心の状態と環境を作る
- 行動そのものに「快」を関連づける
このステップ3までできれば効果を意識してもいいでしょう。効果が出ればさらに気分が良くなり、良いサイクルが機能しはじめます。こうなるともう、やらずにはいられないという状態になるはずです。がんばりましょう。
ずいぶんと長くなってしまいました。ぜひ、今回の内容を参考に、なかなかできなかったことを行動を起こし、習慣化することにトライしてみてください。
では、次回までごきげんよう。
●執筆者プロフィール 石橋 良造
日本ヒューレット・パッカード (HP) に入社し、R&D 部門で半導体計測システムの開発に従事した後、開発プロセス改革プロジェクトに参加。ここで、HP 全社を巻き込んだ PLM システムの開発や、石川賞を受賞した製品開発の仕組み作りを行い、その経験をもとに 80 社以上に対して開発プロセス革新やプロジェクト管理のコンサルティングを実施。独立して株式会社 RDPi を設立した後は、より良い改革のためには個人の意識改革も必要、と、北京オリンピックで石井慧を金メダルに導いたピークパフォーマンスのコーチ養成コースを修了し、個人のやる気やモチベーションを引き出す技術の開発と、開発プロセスやプロジェクト管理の仕組み改革との融合を続けています。
●株式会社 RDPi :http://www.rdpi.jp/
●メトリクス管理ウェブ : http://www.metrics.jp/
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●ブログ : http://ameblo.jp/iryozo/entrylist.html