☑EMC測定の基礎
7.EMC評価方法(イミュニティ4)
マイクロウェーブファクトリー株式会社
2013.02.21
みなさんこんにちは。「EMC測定の基礎」も大詰めになってきました。今回は伝導イミュニティ試験の2種類目、IEC 61000-4-6について説明しましょう。
前回、簡単な絵を描いてご説明しましたが、試験対象となる製品に直接電波で入る「放射」と配線(ケーブル)を伝って入る「伝導」があります。このように製品へ流入する経路の違いについてはご理解いただけたかと思います。まぁ、実際目に見えるわけではありませんし、理解するのはなかなか酷なことかも知れませんね。あぁ、そうなんだ…程度で結構です。
皆さんが家で電気製品を使うときに電気を取るコンセント。もちろんここには電気が来ているわけですが、いろいろなノイズも潜んでいるんです。別の部屋で使っている電気製品のノイズがコンセントに流れ込み、電線を伝って別の部屋のコンセントに現れたり、屋外の電線がアンテナの役目をして、周囲にあるノイズが入り込んで、コンセントに現れるのです。こういったノイズに対しても耐性を持っていなければなりませんので、こういった状況を模擬して行うのが、この伝導イミュニティ試験です。
ノイズが流入してくる経路については前に書いたとおりですが、この経路によって実は試験する周波数も違ってくるのです。放射イミュニティ試験では、80MHzから1000MHzという周波数で試験を行うと以前ご説明しましたが、伝導イミュニティでは、80MHzより下の周波数150kHzから80MHzの範囲で試験が行われます。
これは、ノイズが80MHz以上の高い周波数成分を持っている場合は、電波として直接製品に飛び込む割合が大きく、80MHzより低い周波数成分を持っている場合は、電線などを伝って製品に入り込む割合が大きいからなのです。ただ、この80MHzという周波数で明確に分かれるわけではなく、ノイズの種類や製品の形状、動作状態などで流入経路は変わってきますが、「だいたい」このあたりの周波数で変わることが多いようです。ただ、試験をするためには条件を決めなければなりませんから、ここで書いた範囲は、規格で要求する試験の方法で決められている範囲と理解してくださいね。
放射イミュニティの場合は、試験電波が飛び交うため、電波暗室という部屋で試験が行われるとご説明しましたが、この試験は電波が飛び交うことがありませんので、電波暗室までは必要ありませんが、シールドルームと言われる電波を遮蔽する部屋で行われます。
シールドルーム
信号発生器という機械でノイズの代わりとなる信号を発生させたのち、必要な信号レベルとなるまでアンプで大きくされた信号は、注入装置(CDNやEMクランプと呼ばれる装置)で電線に注入させて試験を行います。
伝導イミュニティ試験の一例
今回まで、様々なEMC(エミッション測定や、イミュニティ試験)について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。まだまだたくさんの規格がありますが、今回までにご紹介した測定や試験は、だいたいどのような製品に対しても行われる(行わなくてはならない!)のです。冒頭にもお話しましたが、EMCに携わっていない方々に、EMCとは何なのかを少しでも理解してもらえればと思いながら書いてきましたが、結構難しい内容になってしまいましたね。
次回はいよいよ最終回ですが、これまでのことをお温習いしながら纏めたいと思います。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
●マイクロウェーブファクトリー株式会社プロフィール
「We support your power」を合言葉に、電波に関する先端技術開発に携わるエンジニアの方を全面的にサポートし、ノウハウを生かした解決策を提供することを目指した「電波のトータルソリューションカンパニー」。
新横浜にある「図研 Technical Lab.」では、測定スタッフとしてお客様をサポート。
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