EMC測定の基礎:EMC評価方法(イミュニティ1)

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03


☑EMC測定の基礎

4.EMC評価方法(イミュニティ1)

マイクロウェーブファクトリー株式会社

2012.11.22

みなさん、こんにちは。日に日に寒さも増してきましたが、いかがお過ごしでしょうか?
これからの季節、たくさん厚着をするのに加え、空気が乾燥するのでお目見えするのが静電気。嫌ですよね、あの「パチッ!」暖かくなるまでの暫くの間付き合わなくてはならないかと思うと気が重いです。
さて、今回もEMCの話にお付き合い下さい。前回からは実際に測定や試験はどのように行われるかをお話させていただいており、EMI(エミッション)の測定方法についてお話しましたね。今回からはEMS(イミュニティ)についてです。EMSは項目が多いので、数回に分けて書きたいと思います。
ここではIECの61000-4シリーズで規定されている試験項目についてお話しましょう。
簡単なおさらいですが、IECではTC77という専門委員会でEMC規格について審議されていますが、この中から多くの製品規格でも取り入れられているSC77B(高周波EMC)で作られた規格のうち、良く適用される代表的ないくつかについてご紹介しましょう。

  • IEC 61000-4-2 静電気放電イミュニティ試験
  • IEC 61000-4-3 放射無線周波電磁界イミュニティ試験
  • IEC 61000-4-4 電気的高速過渡/バーストイミュニティ試験
  • IEC 61000-4-5 サージイミュニティ試験
  • IEC 61000-4-6 無線周波電磁界による誘導伝導妨害に対するイミュニティ試験



ちなみに、IEC 61000-4-1はこのシリーズの概要について書かれています。

それでは、最初にIEC 61000-4-2 静電気放電イミュニティ試験についてです。静電気放電とは、異なった静電気電位を持つ物体間での電荷の移動でインパルス的な電磁界が発生する現象を言います。と、いきなり難しい話になってしまいましたが、冒頭でお話した「パチッ!」、まさにあの現象です。パチッとしたときに電子機器にワルサをするノイズが発生するのです。そうすると第1回目の①に書いたように機器が誤動作して使えなくなってしまうなんてことが起こってしまいます。今の機器はこのような誤動作はまず起こらず、古い例えになってしまいましたね。それだけ十分な対策が施されている裏付けでもあります。
実際はどのような試験を行うのでしょうか。

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静電気放電イミュニティ試験器(ESDガン)



試験は写真のような通称ESDガンと呼ばれるピストル型の試験器を使いますが、ちょうど人に静電気が溜まり、機器に触れたときに放電する状態を模擬できるような電気回路が組み込まれています。人体と等価な電気回路は大凡250pFのコンデンサと150Ωの抵抗で近似できるようです。

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ESDガンと人体は電気的に等価


このESDガンを製品に近づけて回路に溜まった電気を放電させて試験を行いますが、そのときの放電電圧は、規格によって機器毎に決められています。
例えば靴を履いた人が乾燥した部屋で絨毯の上を歩くと、数kV~数十kVの電気が溜まると言われていますので、これを模擬するために電圧も同じように設定するわけです。
実際の試験では、低い電圧から1kV、2kV、4kV、8kVといったように徐々に上げていきます。試験の対象となる部位は、人が触る可能性のある部分で、スイッチやボリュームなどのツマミ類、タッチパネル他、製品を扱う際に触れるような部位に対して試験をしていきます。放電のさせ方にもいくつか種類があります。