☑EMC測定の基礎
2.EMCの国際規格
マイクロウェーブファクトリー株式会社
2012.09.27
みなさん、こんにちは。EMC測定の基礎ということで第1回はEMCとは何?を簡単に説明させていただきましたが、少しはお解りいただけましたでしょうか。これからますます多様化する情報化社会において、ノイズによる製品の誤動作、暴走事故は非常に大きな社会問題ですね。消費者が、安心して製品を使えるようにするためにEMCはとても大切な分野になります。
さて、今回もお菓子でも食べながら軽く読み流して下さい。
第1回の最後にも書きましたが、ノイズを全く発生しない、またノイズの影響を全く受けない製品を作ることはまず不可能でしょう。仮に出来たとしても非常に高価で扱いにくい製品になってしまうこと間違いなしです。そんなもの誰も買いたいなんて思わないですよね。そこで「ここまでならOK!」という線引き(規定)をして、これに向かって製品を開発・設計していくことになります。
この規定について、製品がどの程度ノイズを発生しているかをエミッション(またはEMI)と呼び、ノイズの影響の受け難さ(耐性)をイミュニティ(またはEMS)と呼ぶのが一般的です。そして、これら両者を合わせてEMCと呼びます。EMCの本には必ずこのように説明されていますね。
ここで、疑問が出てきませんか?いったい誰が規定するの?その規定した値は適切なの?実情に当てはまっているの?と。
実はEMCを牛耳る独裁者がいて、その者が… ということは全くなく、国際的な標準を作る組織(団体)、皆さんにはISO 9001や14001などでお馴染みのISO(国際標準化機構)もそのひとつですが、電気・電子やこれに関係する技術を扱うIEC(国際電気標準会議)という団体があります。ここでEMCについても各国の代表が議論を重ね、規定値を決めているんです。IECはISOほど馴染みがないと思いますが、ジュネーブに本部を置き、日本をはじめ100ヶ国以上が参加している団体で、IECの中には分野ごとに規格を作る100以上の専門委員会(TC:Technical Committee)があるんですよ。
洋楽を聴きたいと海外の音楽レーベルCDを買ったり、海外の音楽配信サイトからダウンロードしたとき、そのまま自分のCDプレーヤーやPCで聴けますよね?洋画のDVDを観るときも同じように。これもIECなどの団体で細かく規格を決めて標準化されているおかげなんですね。
さてさて、話をEMCに戻しましょう。EMCの規格はIECではTC77という77番目の専門委員会で決められています。さらにTC77の中でさらに細分化された
- SC77A低周波EMC
- SC77B高周波EMC
- SC77C高電磁界過渡現象
といった3つの小委員会(SC:Sub Committee)があります。
IEC TC77 組織図
何だか難しくなってきましたねぇ。聞いたことないような用語ばかりだし。でもここでは、「はぁ~そんなのがあるんだ~」程度で読んでいただければ。
さて、IECの規格には60000~79999までの範囲で(もちろんまだ全てが使われているわけではありません)番号が付与されますが、TC77で作られた規格は61000が付きます。代表的な規格としては
- IEC 61000-4-2 静電気イミュニティ試験 →第1回で書いた①に関連する試験ですね。
- IEC 61000-4-3 放射無線周波数電磁界イミュニティ試験 →これは②⑤⑥に関連する試験です。
- IEC 61000-4-4 電気的ファストトランジェントバーストイミュニティ試験 →これも⑥に関連してきます。
- IEC 61000-4-5 サージイミュニティ試験
- IEC 61000-4-6 無線周波電磁界に誘導される伝導妨害に対するイミュニティ試験
などがあります。
これらのIEC規格は日本工業規格(JIS)でも取り入れており、例えばIEC 61000-4-2は、JIS C 61000-4-2、IEC 61000-4-6はJIS C 61000-4-6といった規格番号となっています。