回路ブロック運用編

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03


☑コストリダクションプログラム

5.回路ブロック運用

<DS-2とDesignGatewayを連携させた回路ブロック運用の仕組み作り>

2011.03.24

1 回路ブロック運用は、課題解決に向けた普遍的な取り組み

昨今の日本の製造業を取り巻く環境は、グローバルな競合との争いの中、市場ごとに異なる顧客ニーズへの対応、それに伴い多様化する製品仕様が求められ、加えて製品開発期間の短縮化やさらなる徹底的なコストダウン、厳格化される安全規格への対応が要求されます。
これらの課題に対する取り組みの中で、その全てに共通して有効となる設計手法として、「回路ブロック運用」が挙げられます。今回はここに焦点をあて、ご紹介させていただきます。

回路ブロック運用というと、昨今「モジュラーデザインLinkIcon」が注目されていますが、このモジュラーデザインの考えをエレキ設計に適用するためには、回路ブロック運用(回路ブロックの標準化/共有化)をベースに考える必要があります。本来は、物理的なPCBアセンブリレベルの共有化(パターン流用)まで含めて考える必要がありますが、そのステップに進むうえでも、まずは回路ブロック運用が前提となります。

標準化した回路ブロックを適用し、その組み合わせで製品設計を行うことにより、QCDに絡む様々なメリットが考えられます。

<回路ブロック運用の効果>
●回路の共有化により、製品別に個別に設計することによる直接・間接ロスの削減【C】【D】
●信頼性の高い回路ブロックの適用により、設計初期段階からの品質向上【Q】
●標準回路の適用により、部品種類数の削減(部品の標準化)【C】
●回路ブロックのモジュール化により、設計変更の簡易化【D】

B2B・B2Cの違いや製品特性の違いにより、ベースモデルからの流用設計、テンプレート回路運用、標準回路ブロック運用など、その取り組みのレベルは様々ですが、各社目指しているところは同じといえるのではないでしょうか。回路ブロック運用は、課題解決に向けた普遍的な取り組みであるといえます。


crp_110324_7.jpg2 なぜ回路ブロック運用は定着されないのか

しかし、回路ブロック運用が課題解決に向けた普遍的な取り組みでありながら、実際に回路ブロックを標準回路ブロックライブラリとして登録・管理し、運用できている設計部門は少ないのが実情です。なぜ回路ブロック運用は多くの設計部門で定着されないのでしょうか。以下に回路ブロック運用の課題を挙げます。

(1) 回路ブロックの標準化、およびメンテナンスが困難
回路ブロック運用を適用するにあたり、どのような基準で回路ブロックを標準化するか、またその回路ブロックを、いかに陳腐化せず将来にわたって鮮度を保てるようメンテナンスできるかが、最も重要なポイントとなります。

部品の多くが専用部品で構成されるメカ領域と比較して、エレキ領域では、ほぼ全てが外部調達可能な汎用電子部品で構成されるため、標準回路ブロック内で適用する汎用電子部品は、生産中止(ディスコン)情報や代替部品情報も関連付けて管理・メンテナンスする必要があります。またエレキの領域では、テクノロジの進化が早く、製品/モジュールの陳腐化も早いため、標準回路ブロック化にあたっては、メンテナンスをしながら長きにわたって適用できるよう、回路ブロックの構成を設計する必要があります。

回路ブロック運用を適用できている企業では、そのほとんどが回路ブロックを登録・管理する専任部門(または専任者)を立てていることが共通していえます。企業によっては、製品設計とモジュール設計の役割担当を完全に部門レベルでわけて、モジュール設計によりライブラリ化された回路ブロックを、製品設計で使いまわすという設計スタイルを確立しているケースもあります。回路ブロック運用を適用するには、回路ブロックライブラリの位置づけを上げて、設計部門全体で取り組む体制づくりが必要といえます。


(2) 回路ブロックは製品設計時に個別に変更するケースが多い
回路ブロックをライブラリ化できたとしても、それを製品設計で活用する場合、通常は製品設計時に個別にフィッティング(最適化)を行い、大小は別として変更するケースがほとんどです。その場合、製品設計の回路図に適用している各回路ブロックに対し、標準回路からの変化点/変更理由を、何かしらの形で管理(情報取得)することが求められます。
また、ライブラリ化された回路ブロック(マスター回路ブロック)自体も、日々のメンテナンスにより更新されていくことになりますので、回路ブロックのバージョンを考慮して、変化点/変更理由の履歴を管理し、場合によってはマスター回路ブロックの最新情報を、それを使用している回路図上の回路ブロックへ、更新内容を確認しながら反映することも求められます。

この複雑な要件が、回路ブロック運用の定着における阻害要因となりえます。回路ブロック運用固有の要件を満たした、管理の仕組みが必要といえます。


(3) 回路CADの機能が要求内容を満たせていなかった
また、これは図研の反省すべき点でもありますが、回路ブロック運用の適用にあたり必須となる回路図CADの階層設計機能が、従来までは求められる要求内容を満たせていなかったことも、回路ブロック運用が定着できていない一つの理由だと認識しています。回路ブロック運用を目指し、階層設計機能の評価までは行いながらも、機能が求めるレベルに達していないことから、採用を見送ったケースも多いのではないかと思います。

この課題については、回路図CAD「Design Gateway」(以降DG)の最新となるRev8.0にて、階層設計機能を大幅に改善し、従来までの機能面での問題点の多くを解消しています。
DGの階層設計機能の詳細は、『Club-Z 2月号:図研ベテランSEによる知って得する機能解説 -回路ブロック作成・利用編-』に掲載していますので、そちらも合わせてご参照ください。