設計資産の活用編

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03


☑コストリダクションプログラム

2.設計資産の活用

2010.08.26

開発部門がコストリダクションに取り組むためには、まず担当している製品の製品コストの構造を知る必要があります。製品コストには、大きく分けて変動費と固定費があります。前回取上げた「部品コスト」は変動費の中の大きな部分を占める材料費にあたります。変動費にはこれ以外に変動加工費と呼ばれるものがあります。固定費は売上げのボリュームに関わらずかかる一定のコストのことで、設備の減価償却費や人件費が主な項目です。

変動費・・・材料費、変動加工費など
固定費・・・人件費、減価償却費、固定資産税など


製品コスト=変動費(材料費、変動加工費など)+固定費(人件費、減価償却費など)

変動費と固定費は必ずしも明確に分けられない場合もあります。


固定費は読んで字のごとく固定的にかかってくるものですので、絶対値としてこれを減らすには、事業の統合・整理など経営的な視点でのドラスティックな取組みも必要になってきますが、ここでは製品開発に関わる様々な効率化を進めることで売上げに占める固定費の割合(固定比率)を下げることについて説明します。
固定費を下げるということは、損益分岐点(利益が上げられる最低の売り上げボリューム)を引き下げ、不況期の販売不振時でも利益を稼ぐことが出来る強い財務体質につながります。

それぞれの会社や製品の種類によって変動費、固定費の割合は様々です。効果の高いコストリダクションの取組みをするためには、まず自分の担当する製品のコストの構造を理解し、どこをたたくのが一番効果的かを把握しなければなりません。今回は、おもに固定費(率)に的を絞る場合に効果的な「設計資産の活用」がテーマです。

CADデータや設計ドキュメント等の過去の設計情報を有効に活用出来れば、下に示すようなメリットが生まれます。

  • ■設計工数の削減
    • 製品あたりの設計工数が削減されることにより、設計者はより多くの時間を新製品開発や新機能の開発に充てることができます。同じ設計工数でより多くの新製品、新機能の開発が可能になり、それにより売上げを伸ばすことができれば、固定比率の削減につながります。
  • ■品質の安定
    • 既に品質が担保されたユニットの流用により試作・評価の回数を減らしたり、不良率の発生を抑えることで品質確保に関わる工数・コストを低減することができます。
  • ■ムダなコストの削減
    • 設計資産をうまく機能モジュールとして管理していけば、新製品の開発において不必要な新規設計ユニットを減らし、新たな製造設備や金型への投資を最小限に抑制することができ、既存製品の部品や仕掛のムダも減らせます。
  • ■モジュラーデザイン、プラットフォーム設計によるさらなるコスト構造の改善
    • 中長期で取組むべきことですが、設計資産を機能モジュールできちんと階層的に整理・管理し、それぞれのコストを分析することで、どの資産が自社の優位性のある部分か、どの部分がそうでないか、が検討しやすくなります。製品コストの固定比率を下げ、損益分岐点を下げる効果的な外部委託などを考えることができます。また、特に個別受注型製造業の場合、モジュラーデザインは変動加工費の抑制にもつながります。


ただ実状として、以下のようなケースが多いのではないでしょうか?

  • 設計成果物は個人で管理し、自分が担当した設計の経験のみ次の設計に活かされている
  • 成果物はシステムで管理されており、過去の設計情報は参照できる環境にあるが、他の設計者の情報を利用する場合、その都度、担当者に状況(例えば、量産直前の部品変更の内容がCADデータに反映されていないなんて事はないか)の確認を行う必要があるため、利用できる情報・データが限定される
  • 管理対象が最終成果物である図面(電子データ)のみのため、過去データの利用が困難になっている


つまり、設計者にとって「欲しい時に」「欲しい情報が」「簡単に入手」できないのであれば、結局それらの価値ある情報は利用されることが少ないでしょう。

では、設計資産を有効に活用するためには、どの様な環境が必要でしょうか?まずは、よくある現状のデータ管理の課題について整理していきます。